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白夜行:日文版-第23章

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 幸い和子は帰っていた。電話をかけてきたのが奈美江だと知ると、「あらあ」と意外そうな声を出した。幾分|揶揄《やゆ》するような響きもあった。
「さっきはすみません」と奈美江はいった。「何だかちょっと、その……気分が仱椁胜胜盲沥悚盲郡螭扦埂
「いいの、いいの」和子の口眨陷Xかった。「あなたには少し無理だったかもね。ごめんなさい。あたしのほうが謝らなきゃね」
 あの程度のことで逃げるなんて意気地なしね――そういっているように奈美江には感じられた。
「あの、じつは――」
 奈美江は時計のことを切り出した。洗面台に忘れてきたように思うのだが、気づかなかったか、と。
 しかし和子の答えは、「見なかったわねえ」というものだった。
「誰かが気づいたなら、たぶんあたしにいったと思うの。そうすれば、預かってたんだけどねえ」
「そうですか……」
「たしかにあの部屋に忘れてきたの? 何なら、眨伽皮猡椁Δ俊
「いえ、あの、とりあえずそれは結構です。あの部屋ではなかったかもしれないので、もう少しほかの場所を探してみます」
「そう? じゃあ、もし見つからなかったらいってちょうだい」
「はい。どうも夜分すみませんでした」
 奈美江は早々に電話を切った。大きなため息が出た。どうしよう――。
 時計のことなど諦めてしまえば話は早い。元々、なくしてもかまわないと思い続けてきたのだ。今回にしても、忘れてきた場所がほかのところであったなら、迷いなく諦めただろう。
 しかし事情が摺盲皮い俊¥ⅳ螆鏊恕ⅳⅳ螘r計を忘れてきたのはまずかった。ほかの時計なら、何の問睿猡胜盲俊D蚊澜霞い筏峄冥筏俊¥ⅳ螭胜趣长恧匦肖韦恕ⅳ胜激ⅳ螘r計をはめていったのだろう。時計なんて、ほかにも持っていたのに。
 何度か煙草を吸った後、灰皿の中でその火を消した。じっと空間の一点を見つめる。
 ひとつだけ方法があった。奈美江はその方法が無证扦胜い嗓Δ蝾^の中で吟味した。すると、さほど難しくないのではないか、という気になってきた。少なくとも、危険だとは思えなかった。
 ドレッサ紊悉酥盲欷繒r計を見た。十時半を少し回ったところだった。

 十一時過ぎに奈美江は部屋を出た。人目につかないためには、なるべく遅いほうがいい。しかし遅すぎては地下鉄の終電に間に合わなくなるおそれがあった。彼女のアパ趣巫罴膜犟kは四つ橋線花園町駅で、西長堀駅に行くにはなんばで仱険Qえなければならない。
 地下鉄はすいていた。座ると向かい側のガラスに彼女の姿が映った。Fの眼鏡をかけ、トレ施‘にデニムのパンツといった色気のない格好をした、明らかに三十代半ばの女がそこにいた。このほうがやっぱり落ち着く、と彼女は思った。
 西長堀に着くと、昼間川田和子と共に通った道を歩いた。和子は浮き浮きしていた。どんな男の子が来るか楽しみ、ともいっていた。奈美江は眨婴蚝悉铯护膜膜狻ⅳⅳ螘rすでに気持ちが臆《おく》しているのを自覚していた。
 殆ど迷うことなく、例のマンションに着いた。階段を三階まで上がり、三〇四号室の前に立った。まずインタ邾螭违堀骏螭蜓氦筏皮撙搿P哪牑喂膭婴い筏胜盲俊
 だが応答はなかった。ためしにもう一度チャイムを鳴らしたが、結果は同じだった。
 ほっとすると同時に緊張した。奈美江は周囲を見ながら、ドアのすぐ横にある水道のメ咯‘ボックスの扉を開いた。昼間、川田和子が水道管の陰から合鍵を取るのを見ていた。
「馴染み客になると、合鍵の場所を教えてくれるのよね」和子は嬉しそうにいっていた。
 奈美江が同じところに手を伸ばすと、指先に触れるものがあった。思わず安堵の吐息が漏れた。
 合鍵を使って錠を外し、おそるおそるドアを開けた。室内には明かりがついていた。だが玄関に靴はない。やはり誰もいないようだ。それでも彼女は物音をたてぬよう、慎重に部屋に上がり込んだ。
 昼間は片づいていたダイニングテ芝毪紊悉ⅳ椁盲皮い俊D蚊澜摔悉瑜铯椁胜盲郡⒓殼る姎莶科筏溆嫓y器のように見えた。ステレオか、それともあの映写機の修理でもしているのだろうかと彼女は思った。
 いずれにしても、誰かが何かをしている途中のようだ。彼女は少し焦った。その誰かが戻ってくる前に時計を見つけねばならない。
 彼女は洗面所に行き、小さな洗面台の前を探した。ところがたしかに置いたはずの場所に腕時計はなかった。誰かが気づいたということか。ならばなぜ川田和子に預けなかったのか。
 不安になってきた。もしかすると、高校生の一人が時計を見つけたのではないか。その彼はわざと誰にもいわなかった。こっそり自分のものにするためだ。伲荬摔扦獬证盲皮い堡小ⅳい椁摔悉胜毪坤恧Δ瓤激à郡猡筏欷胜ぁ
 全身が熱くなるのを奈美江は感じた。どうすればいいだろう。
 彼女は冷静になろうとし、まず息を整えた。自分の勘摺い扦ⅳ肟赡苄预摔膜い瓶激à俊O疵嫠送欷郡人激盲郡ⅳ饯欷襄e覚かもしれない。外した腕時計を手に持って部屋に戻り、何気なくそのへんに置いたのかもしれない。
 彼女は洗面所を出て、和室に足を踏み入れた。畳の上は奇麗に片づいている。あのリョウという青年が片づけたのだろうか。彼は一体何者だろう。
 昼間は取り外されていた窑悉幛椁欷皮い郡韦恰ⅴ佶氓嗓蛑盲い皮ⅳ盲坎课荬姢à胜盲俊1伺悉妞盲辘纫を開いた。
 まず奇妙なものが目に飛び込んできた。それはテレビ画面だ。中央にテレビのようなものが置かれ、そこに何か映っているのだ。ふつうの映像ではない。彼女は顔を近づけた。
 これは――。
 いくつもの幾何学模様が画面上で動いていた。最初は単純に模様が変化しているだけかと思ったが、そうではなかった。よく見ると中央にロケットの形をしたものがあり、それが前方から来る円形や四角形の障害物をよけながら前に進もうとしているのだった。
 テレビゲ啶我环Nだろうかと奈美江は思った。彼女も何度かインベ扩‘ゲ啶颏筏郡长趣悉ⅳ搿
 画面の動きはインベ扩‘ゲ啶郅丧攻喋‘ズなものではなかった。しかし次々に襲ってくる障害物を見事にかわすロケットの動きには、つい見とれてしまうものがあった。事実彼女は見とれていたのだろう。だから小さな物音にも気づかなかった。
「気に入ったようやな」
 突然後ろから声をかけられ、奈美江は小さな悲鳴をあげた。振り返るとリョウと呼ばれた青年が立っていた。

「あっ、ごめんなさい。あの、忘れ物をしたものだから、あの、合鍵のことは川田さんから聞いていて……」奈美江は狼狽し、しどろもどろになった。
 しかし彼は彼女の言葉など聞いていないようだった。黙って彼女をどかせると、画面の前で胡座をかいた。さらに傍らに置いてあったキ堠‘ドを膝の上に載せ、両手の指を使っていくつかのキ蜻丹い俊
 たちまち画面上の動きが変わった。障害物の動きが速く、多彩になった。リョウはキ蜻丹Aける。ロケットが障害物を次々とかわしていった。
 奈美江にも、彼がロケットの動きを操作しているのだとのみ込めた。先程までは自動的に動いていたロケットが、今は彼の指先によって、前後左右に動かされている。
 やがて円形の障害物がロケットに激突した。ロケットは大きな×印に変わり、続いて画面上に『GAME OVER』の文字が出た。
 彼は舌打ちをした。「やっぱり速度が遅い。ここらが限界かな」
 何のことをいっているのか、無論奈美江にはわからない。それよりも、一刻も早くこの場から逃れたかった。
「あの、あたし、帰るから」立ち上がりながら彼女はいった。
 すると背中を向けたまま、リョウが訊いてきた。「忘れ物は見つかった?」
「ああ……ここじゃなかったみたい。ごめんなさい」
「そう」
「じゃ、おやすみなさい」
 奈美江は身体の向きを変え、歩きだした。その時、後ろから彼の声が聞こえた。
「勤続十年記念、大都銀行昭和支店……か。堅い仕事をしてるんやな」
 彼女は足を止めた。振り返るのと、彼が立ち上がるのが、ほぼ同時だった。
 彼が彼女の顔の前に右手を出した。その手に腕時計がぶら下がっていた。
「これやろ、忘れ物は」
 一瞬とぼけようかと思ったが、彼女はそれを受け取っていた。「……ありがとう」
 リョウは黙ってダイニングテ芝毪韦郅Δ貧iいていった。テ芝毪紊悉摔膝供‘パ未盲い皮ⅳ盲俊1摔弦巫婴俗辍⒋沃肖韦猡韦蛉·瓿訾筏俊s茎萤‘ルが二つと折り詰め弁当が一つだった。
「晩御飯?」と彼女は訊いた。
 彼は答えなかった。代わりに何かに気づいたように缶ビ毪我护膜虺证辽悉菠俊!革嫟啶俊
「あ……いらない」
「そうか」彼はそのまま缶ビ毪紊wを開けた。白い泡の粒が飛んだ。あふれる泡を受けるように彼はビ毪蝻嫟螭馈1伺摔先盲胜い瑜Δ艘姢à俊
「あの……怒らないの?」奈美江は訊いてみた。「勝手に入ったこと」
 リョウは彼女をじろりと見上げた。
「まあええ」そして弁当の包みを開け始めた。
 奈美江としては、このまま部屋を出てしまうこともできた。しかし何かがそれをためらわせた。こちらの職場が知られているというのに、自分はこの青年のことを何も知らないという思いもあった。だがそれ以上に、このまま出ていったのでは惨めな気持ちが残るだけだと思った。
「途中で抜けたことは怒ってないの?」彼女は訊いてみた。
「途中で? ああ……」何のことか彼はわかったようだ。「別に。たまにあることや」
「怖くなったわけじゃないの。元々あたし、さほど仱隁荬袱悚胜盲郡螭坤堡伞娨苏Tわれて」
 彼女の言葉の途中から、彼は箸《はし》を持った手を振り始めていた。
「面倒臭い話するな。どうでもええ」
 返す言葉がなく、奈美江は唇を結んで青年の顔を見返した。
 彼は彼女を無視し、弁当を食べ始めた。カツの入った弁当だった。
「ビ搿ⅳ猡椁盲皮猡いぃ俊鼓蚊澜嫌崵い俊
 勝手にしろ、というように彼は顎をしゃくった。彼女は彼の向かい側に座
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